池辺町の鶴見川が近い場所に、大平技研はありました。会社は大きな看板もなく、奥まったところにあり、世界中に知られている会社とは思えない、こじんまりしたところでした。
社長さんの大平さんが、会社の説明やどうしてプラネタリムをつくるようになったのか、について話してくれました。大平さんは、すでに小学生のころ、自分で設計図を書き、段ボールに穴をあけ、ピンホール式プラネタリウムをつくっていました。川崎市青少年科学館のプラネタリウムに通い、校長先生に紹介してもらった学芸員さんと仲良くなって、プラネタリウムのしくみを教えてもらったりするようになりました。
小学生の大平さんが書いた設計図をみせてもらいました。
大学では機械工学を専攻したのですが、まわりの友人たちは、車のメカニズムなどに興味を持つ中、大平さんは、学園祭で自作のプラネタリムを展示しました。投影機、ドームなども手作り。当時、画期的だったため、大学生だった大平さんに、たくさんのマスコミの取材がありました。そのプラネタリウムから、さらに改良を続け、大ヒットした「MEGASTAR(メガスター)」をつくりました。メガスターのすごいところは、それまでの機械の100倍以上にあたる170万個の星を、世界で初めて映せるようにしたことです。これまでは6.5等星までの星しか映すことができなかったのですが、メガスターは12.5等星の星まで映すことができ、投影機の歴史をぬりかえました。現在では2200万個も映せるそうです。また、世界で初めて手軽に移動できるコンパクトサイズにしたのも、大平技研の技術です。それまでは運んだり移動させたりするのがとても大変だったそうです。ホームスターという家庭用のプラネタリウムでさえ、6万個を上映できるすぐれものです。
いつも新しいものを切り開いてきた大平技研の技術は、まねをされることも多いのですが、大平さんは「まねをされるくらいのものを創る」という気持ちでいるそうです。現在は、コンピュータグラフィックをプログラムに組み込む技術も取り入れています。
光学式プラネタリウムをつくっている会社は、世界に4つしかないそうです。そのうちの3つがなんと日本にあり、そのひとつが大平技研です。大平技研のメガスターは、世界中から注文があります。私たちの近くでメガスターの投影が見られるところは、かわさき宙と緑の科学館、神奈川工科大学厚木市子ども科学館、日本科学未来館などです。
そんな大きな仕事をしている、大平技研なのですが、社員は16名しかいないことに驚きました。プラネタリウムの設計、製作、販売まで、ここでつくっていて、プラネタリウムの移動公演、上映番組の制作も行っています。
大平さんはたくさんの本も執筆しています。そしてなんと!大平さんの書いた本が「星に願いを~7畳間で生まれた410万の星~」というタイトルのテレビドラマになりました。大平さんの役は、堂本剛さんが演じました。自分の自宅の7畳間開発からスタートしたことから、7畳のお部屋で生まれた410万の星というサブタイトルがついています。
最新式のプラネタリウムの映像を見せてもらえて、とてもワクワクしました。さらに、実際に実験室で投影しているプラネタリウムの操作の体験をさせてもらうことができ、楽しい取材でした。
記事:高野遥海 高野絢海 小森悠生 佐藤修哉
取材:高野絢海 高野遥海 佐藤修哉 小森悠生 西村太一 折下陽春 折谷穂音子
村田美優 實籾映美